「私は白翔の姉です。妹と入れ替わりで来たので、あの子は帰らせました」
「あら、そうなのねぇ」

 一旦失礼しますね、と言い残し、看護師が病室を後にする。

「ごめんね、色々。びっくりするよね」

 急に瞳が緋くなったことを思い、自虐的に笑った。うん、と白翔が頷いた。

「びっくりはするけど、嬉しいよ。本当の深緋が知れて」

 本当の、私。

 その言葉に嘘が感じられなくて、胸の奥がじわりと熱を帯びた。白翔が自分を知りたいと思ってくれるのが、今さらになって嬉しい。

「なんて言うか。いきなり大人っぽくなったよな?」
「うん。十歳老けたからね」
「老ける、っていうのは……」

 どういう事情でそうなるのかを知りたいのだと察して、簡潔に説明する。

「血を吸ってから二十四時間が空くとね。私たちは外見上、十年歳を取るの。
 私も今までは毎日吸血……、血を飲んでいたから。姿が変わる事は無かったんだけど。今日は仕方ない」

 水筒をなくしてしまったし。病み上がりの白翔からもらって、また貧血になったら嫌だ。

 話を聞きながらも、白翔は幾らか首を傾げた。仕方ない、と言う深緋の事情が気になるようだが、眉をひそめるだけで言葉に窮していた。

 それから数分後。再び病室のドアが開いた。医者が白翔を診察して、退院の許可が出た。その日のうちに帰れるとわかってホッとする。