十年ぶん歳を取り、二十七歳になった深緋を呆然と見つめ、白翔は言葉を無くしていた。目の前で起こった事象がまるでファンタジーなのだ。現実感が伴わないのも無理はない。
「びっくりしたよね。それが普通の反応だと思う。一体どういうマジックだって思うかもしれないけど」
「っすっげぇ、美人っ」
「……は?」
「深緋、なんだよな? ヤバい、俺。こういう雰囲気も凄い好き。見てるだけでドキドキする」
「……あの」
「なんつーか、色気? が……。半端ないかも」
「あのね、白翔」
「ごめんっ、話を聞く前にひとつだけ。お願いしてもいい?」
「なに?」
「抱きしめたい」
「……は?」
「あ、いや。無理にとは言わないけど。抱きしめたら、だめ?」
「別に良いけど」
なんて言うか。緊張感とか緊迫感に欠けるよね、白翔って。
若干の上目遣いと柏手を打つ彼に深緋はため息をついた。彼の反応が予想していたものとかけ離れていて、呆れるほかない。
ベッドに座った体勢で白翔が両手を広げるので、深緋も丸椅子から移動してベッドに浅く腰掛けた。
軽く抱き寄せられる。頭を白翔の肩に載せると、彼の体温と匂いを感じて安心感が増した。好きという感情が膨らんで胸が高鳴るのも束の間。



