吸血少女はハニーブラッドをご所望です(コミカライズ原作です)

「何か困ったことがあったら言えよ? いつでも相談に乗るからな?」

 じゃあ、と言って立ち去ろうとする青年を呼び止めた。妖しく口角を上げ、瞳を三日月型に細めれば大抵の男はイチコロだ。

 フェロモンと呼ぶべきだろう、女吸血鬼には生まれつき男を誘う能力が備わっている。

 二十代そこそこの青年は目を見開き、ゴクリと喉を震わせた。まるで金縛りにあったみたいに動けなくなっている。

 深緋は彼の首筋に目を据えて、一歩二歩と距離をつめた。

 岡本大貴の首に腕を回そうとしたところで、校舎に備えられた拡声器から突如として音声が響いた。

『岡本先生、岡本先生、至急職員室までお戻りください』

 チッ、邪魔が入ったか。

「あ……っ、俺、だよな」

 岡本大貴は魔法が解けたようにハッとして、うろたえた瞳で深緋を見た。

「じ、じゃあな、朝比奈」
「はい、ありがとうございます、先生」

 深緋は穏やかに笑い、吸血を諦めて踵を返す。仕方なく教室へ戻ることにした。

 吸血に関して述べれば、知り合いや顔見知りから血を吸っても、何ら問題はない。そして深緋の正体がバレる恐れもない。

 なぜなら対象者は吸われた直後に気を失い、前後の記憶があやふやになるからだ。

 深緋たちが持つ特殊なホルモンがそうさせるのだそうで。もう何十年も前に祖母から教わったのだ。