一段上がった敷居の高い場所に、三十代の女性が一人、胡座を組んで座っている。
漆黒に満ちた艶やかな髪を高い位置で結わえ、無表情に深緋たちを見据えた。
無骨な雰囲気を漂わせるその女性は、スッと手の平を出して、座ることを促した。
この村の長かもしれない。
深緋は女性と三メートルほどの距離を開け、白翔と並んで正座をした。板の間なので足が痛い。白翔は女性同様、胡座をかいていた。
「さて。用件を聞こうか。先ほど門番に願いを持って来たと申したな?」
「はい」
「ならおまえも、伝承の女子になったクチか?」
伝承の女子と聞いて、童話で語られる、“かわいそうな女の子”を思い出した。
「はい。今日一緒に来た、隣りの彼を好きになってしまって……。この先を彼と一緒に生きたいんです」
「ほう? ならば永遠の若さは必要ないと?」
「必要ありません。もとより、彼が死んだら、私は文字通り生きる糧をなくしてしまいます。
彼が居なくなるまでの若さより、彼と一緒に歳を重ねて老いていきたいんです。“かわいそうな女の子”が願ったように、私も……っ」
人間になりたい。その言葉は敢えて飲み込んだ。後で話すと決めたものの、今この状況で、白翔に勘繰られるのが嫌だった。
「ふっ、良いだろう」
漆黒に満ちた艶やかな髪を高い位置で結わえ、無表情に深緋たちを見据えた。
無骨な雰囲気を漂わせるその女性は、スッと手の平を出して、座ることを促した。
この村の長かもしれない。
深緋は女性と三メートルほどの距離を開け、白翔と並んで正座をした。板の間なので足が痛い。白翔は女性同様、胡座をかいていた。
「さて。用件を聞こうか。先ほど門番に願いを持って来たと申したな?」
「はい」
「ならおまえも、伝承の女子になったクチか?」
伝承の女子と聞いて、童話で語られる、“かわいそうな女の子”を思い出した。
「はい。今日一緒に来た、隣りの彼を好きになってしまって……。この先を彼と一緒に生きたいんです」
「ほう? ならば永遠の若さは必要ないと?」
「必要ありません。もとより、彼が死んだら、私は文字通り生きる糧をなくしてしまいます。
彼が居なくなるまでの若さより、彼と一緒に歳を重ねて老いていきたいんです。“かわいそうな女の子”が願ったように、私も……っ」
人間になりたい。その言葉は敢えて飲み込んだ。後で話すと決めたものの、今この状況で、白翔に勘繰られるのが嫌だった。
「ふっ、良いだろう」



