吸血少女はハニーブラッドをご所望です(コミカライズ原作です)

 村の本館だと思われる大きな建物の前で、案内役の女性は足を止めた。いつ建てられたのか、平屋建ての古い木造家屋だ。

「こちらへどうぞ?」

 ガラガラと音を立てて引き戸が開き、手前に立つ女性とはまた別の女性が顔を覗かせる。こちらの女性も案内人と同様に若い。

 深緋は白翔の手を引き、家屋の玄関へ向かった。

 玄関の三和土(たたき)で靴を揃える。「おじゃまします」と挨拶をし、白翔も靴を脱いだ。

「ご案内しますね」と(たお)やかな雰囲気で笑い、女性は踵を返した。

「なぁ、深緋。さっきから思ってたんだけど、ここって女の人しか居ないのかな?」
「……あ」

 確かに、白翔には危険だと言う以外、ここがどんな場所かを全く説明していなかった。女人の谷と呼ばれる集落だから女性しか居ないんだよ、と説明しようとしたとき。

「この村には女性しか住んでおりませんよ?」

 前を歩く女性が白翔の疑問に答えた。

「あ。そう、なんですか」

 ぎこちなく笑った白翔の返事を聞き、女性が足を止めた。

「こちらのお部屋へどうぞ」

 ギィ、と板張りの引き戸を開けて、中に入る事を促される。変わらず白翔の手を引きながら敷居をまたぎ、部屋の様子を窺う。板の間の床が続く、だだっ広い部屋だった。