吸血少女はハニーブラッドをご所望です(コミカライズ原作です)

 深緋が睨みをきかせたことで、白翔は若干驚いていたけれど、それも束の間。一緒に入れると理解して、彼の機嫌はすこぶる良くなった。

 唯一の男性である白翔がこの場所では最も危険だというのに、彼は暢気(のんき)に浮かれている。深緋やこの谷にいる女性の正体が“何か”を知らないのだから、仕方のないことだ。

 もともと連れて来るつもりなど無かったので、しまったな、と思うが。もう後には引けない。

「なんか。さっきのおばちゃん、怖かったな?」

 白翔は声をひそめ、先ほど通り抜けた門に一度だけ視線を送る。

「そうだね。白翔のことをすぐにでも食べる勢いだった」
「た、食べるって……」

 白翔はウゲ、と言いたげに顔を歪めた。

 おそらく“食べる”を性行為などの“犯す”と勘違いしたのだろう。

 建物に入るまでの間。すれ違う女性全てが、白翔を物欲しそうな顔付きで見ていた。目を細めてニヤつき、本能に則して溢れそうなヨダレを手で覆い隠している。

「例えるならこの谷にいる女性が全員猫で、白翔はネズミなんだよ。ひと口で良いから(かじ)ってみたいって人が大半。捕食されないように、出るまでずっと構えてて」

 できる限りの脅しを口にすると、白翔は大人しく首を縦に振った。

「着きましたよ」