吸血少女はハニーブラッドをご所望です(コミカライズ原作です)

 そして二枚の呼称を考えると、どちらも深緋の主観に寄せている。

 不審な手紙には写真以外のものは入っていなかったが、強いメッセージ性を受けた。

 見張られている。だれかもわからない人物に、私自身が……。一体なんのために?

 心当たりなんて全くない。私に対してのただのストーカーならまだ良い。問題は、だれかが自分の正体を疑っているかもしれないという懸念だ。

 一度出した写真を元通りにして、デスクの引き出しに仕舞う。その日は不安を抱えたまま眠るしかなかった。

 *

 八月七日の月曜日。あらかじめ用意していた地図を頼りに、深緋は山道を歩いていた。方角を見失うといけないから、コンパスも買っておいたけれど、今のところ出番がない。

 デイパックの中には明日の分の水筒と、吸血鬼伝承を語った絵本も入っている。絵本は願いを申し出るのに必要かもしれないと思って、念のため持参していた。

 立ち並ぶ木々の合間を縫うように歩き、そこら中に敷き詰められた枯れ葉を踏みしめる。

 駅から歩いてそろそろ二時間だ。重くなった足がだるく、途中木の根っこに座り込み、休憩を挟んだ。

 上がった息を整えて、ペットボトルの水に口を付ける。空へと向かって真っ直ぐに伸びる木々を見上げると、何処からか鳥の鳴き声が聞こえた。