吸血少女はハニーブラッドをご所望です(コミカライズ原作です)

 振り返って見ると、彼は涼しい顔で鼻の頭を触った。平然さを装った空気がバレバレで、うっかり笑みをこぼしてしまう。

「別にいいけど。こだわりないし」

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 あの日から三ヶ月近く経った今、朝の登校時間が重なれば自然と一緒に行く流れができている。

 異性と親しくなるということは、女吸血鬼にとって、血を提供する相手が増えるということだ。

 しかしながら、深緋は白翔から血をもらおうとは考えなかった。

 まだ成人してもいない同級生(こども)の血を吸うのは、いささか心が痛むから。そんな自分だけのルールを決めていた。

 ある程度の速度を出し切った所で、電車が徐々に減速する。次の駅に停まるため、ホームの定位置でピタリと動きを止めた。

 それまで固く締め切っていたドアが開き、通勤途中のサラリーマンやOLたちがこぞって乗り込んでくる。

 小柄で背の低い深緋が押されないように、白翔が壁になってくれた。うん、やっぱり男の子だ、とつい感心して見てしまう。

 ふと、視界の端に気になる容貌が映った。深緋は目を走らせて、食い入るようにその男(・・・)を凝視した。

 歳の頃は二十代後半で長身。パリッとしたスーツが上品で似合っている。甘いマスクと尖った顎の形から女性を虜にするのに長けている、そんな印象を受けた。現に、男の隣りに並んだOLは、さっきから頬を赤らめながら、チラチラとその男を見ている。