吸血少女はハニーブラッドをご所望です(コミカライズ原作です)

「なに? ()なの? キミって呼ばれ方」

 ズバリといった問いに白翔は口を半開きにし、何と答えるべきかを逡巡していた。「ああ、いや」と否定とも肯定ともつかない曖昧な相槌を返すだけで、口元もこわばっている。

 そんな彼を見て、深緋は祖母を思い出していた。呼び名にこだわるのはうちのリリーさんだけかと思ってた、と嘆息がもれる。

「じゃあ、白翔ね?」
「えっ」
「それとも、白翔くん、の方がいい?」
「あ、いや。白翔で。全然オッケー」
「あっそう」

 それまで彼に持ってもらっていたゴミ箱を受け取る。

「あのさ。明日から猫を飼ってくれる人、探すんだよな?」
「そうだね」
「じゃあ、連絡先、聞いていい? 何か有力な情報とかあったらラインしたいし」

 言いながら白翔がポケットに入れたスマホを取り出し、ID交換の画面を表示させた。「持ってない」とすかさず返事をする。

「え」白翔が意外なものを見るように、目を丸くした。

「携帯。まだ持ってないから」

 勿論、嘘だ。着信音こそオフだが、毎日忘れずに持ち歩いている。家族や学校以外のアドレスは必要ないと考えていた。

「あ。そー……なんだ」

 彼の力ない声を聞き、教室へ戻るため、踵を返した。

 再び歩き出すと「あ、あとさぁ」と背後からまた声がした。

「俺も呼んでいい? 深緋……って」