◇◇◇——吸血鬼と恋。

 むかしむかし、ある村にひとりのかわいそうな女の子がいました。女の子はこの世に生をうけたときから、吸血鬼です。

 女の子は食欲をみたすため、さまざまな男の子の血を吸いました。同じ女の子からではなく、異性の血をもらって何十年も何百年も生きていました。

 吸血鬼の女の子は男の子の血をもらうことで、老いることなく、ずっとずっと生きられます。

 ところがあるとき、村の外でであった男の子に食欲とはちがう感情をもちました。

 女の子は人間の男の子に、なんと恋をしてしまったのです。想いを寄せる男の子も同じ気持ちでした。

 ふたりはお互いの気持ちをたしかめあい、ともに生きようと誓いました。けれど、その誓いはかないません。

 女の子はともに生きられない男の子を想い、悲しみに暮れました。

 何年たっても姿のかわらない女の子のそばで、男の子は年老いていき、とうとう息をひきとってしまいます。

 かわいそうな女の子は男の子を埋めたお墓のまえで泣きました。何日も何日も泣きつづけました。

 大好きな男の子をうしなったことから、女の子は日に日に衰弱し、やがては姿もかわり、目をつむったまま動かなくなりました。

 同じ人間に生まれていたら、こんなに悲しい想いをすることはなかったのに。

 かわいそうな女の子はつよい悲しみをのこしたまま、天に召されてしまったのです。

 おしまい。

◇◇◇

 これはある一族の中で語り継がれた残酷な伝承だ。