異世界召喚された先は魔王様の寝室でした

 ピンクのハンカチを受け取った魔王は目元を押さえ、疑わしい目つきでこちらを見てくる。
 率直に言えば、今すぐ帰りたい。しかし、それを言える雰囲気ではない。
 自分より年上の男性を泣かせるのは、大層心が痛む。泣かせたいわけではないのだ。
 花音は二番目に気になっていたことを口にした。

「ところで、聞きたいのだけど。どうして、召喚した場所がベッドの上だったの?」

 思わぬ質問だったのだろう。
 魔王の涙が引っ込み、何かを思い出すように視線を天蓋に向けたまま、答えが返ってくる。

「ああ……それは、寝る前に興味本位で召喚しようと思ったからだ」

 切羽詰まって藁にもすがる思いで召喚したのなら、まだ許せた。だが、この返答は何だ。
 興味本位で呼び出される人の気持ちになってみてほしい。
 花音が無言のまま身じろぎすると、ベッドのスプリングが弾んだ。気持ちを落ち着けようと目をつぶるが、やはり不満はそう簡単には収まらない。

「…………ぶっとばされても文句はないわね?」

 花音のゆらめく怒気を感じてか、魔王の頬がひきつる。すかさず両手を上げ、降参のポーズを取った。