魔族と会ったことのない人間が、魔王と呼ばれている。しかも、魔界を統べる王ではなく、その正体はただの魔法使いだった。老いない身体は妖精の祝福によるものだという。
こんな馬鹿げた話があるだろうか。
花音は半目になり、いまだに正座を続けている魔王を見つめた。
「物語的には、あなたを倒したら元に戻れると思うのだけど」
「…………僕を殺す気か?」
「そんなに怯えないでよ。いくらなんでも、あなたを殺してまで戻りたいとは思っていないから」
本心だ。さすがにそんな危険な方法は選びたくない。
けれど、魔王の顔色はどんどん悪くなっている。視線に怯えが混じっていた。
「だが、先ほど確かな殺意を感じた……」
「他の方法を考えましょう。もっと平和的な方法を」
話を変えようとしたのに、魔王は悲しげに眉根を下げた。
「……せっかく召喚したのに、帰ってしまうのか?」
はらりはらりと、音もなく雫が頬を伝い落ちる。
花音はぎょっとして、慌ててスカートのポケットからハンカチを差し出した。
「ちょ、ちょっと泣かないでよ。わたしが悪者みたいじゃない」
こんな馬鹿げた話があるだろうか。
花音は半目になり、いまだに正座を続けている魔王を見つめた。
「物語的には、あなたを倒したら元に戻れると思うのだけど」
「…………僕を殺す気か?」
「そんなに怯えないでよ。いくらなんでも、あなたを殺してまで戻りたいとは思っていないから」
本心だ。さすがにそんな危険な方法は選びたくない。
けれど、魔王の顔色はどんどん悪くなっている。視線に怯えが混じっていた。
「だが、先ほど確かな殺意を感じた……」
「他の方法を考えましょう。もっと平和的な方法を」
話を変えようとしたのに、魔王は悲しげに眉根を下げた。
「……せっかく召喚したのに、帰ってしまうのか?」
はらりはらりと、音もなく雫が頬を伝い落ちる。
花音はぎょっとして、慌ててスカートのポケットからハンカチを差し出した。
「ちょ、ちょっと泣かないでよ。わたしが悪者みたいじゃない」



