異世界召喚された先は魔王様の寝室でした

 そこまで考えて、花音はくわっと目を剥く。うつむいていた顔を上げ、抗議した。

「って、あなたは魔王でしょうが。自分の身は自分で守れるでしょ」
「…………それを言われるとつらい」
「視線をそらさない! 大事な話をするときは、ちゃんと目を見て話す!」

 横を向いていた魔王が渋々といった様子で視線を戻す。

(はあ、危なかった。口車に乗せられるところだった……)

 花音は額に手を当てて、ずっと聞きたかったことを質問することにした。

「ところで、元の世界に戻る方法は?」
「方法? そんなものは神様にでも聞いてくれ」

 あっけらかんとした物言いに、花音は瞬きを忘れて放心状態になった。
 言われた言葉を頭の中で反芻し、地を這うような声でつぶやく。

「……ないの?」
「少なくとも僕は知らない」
「……あなた、魔王なのよね? わたしを召喚したのはあなたよね?」
「そうだ。しかし、このとおり引きこもっているので、魔族とは会ったことすらない」