異世界召喚された先は魔王様の寝室でした

(わかることは、状況が確実に切迫していること。ヴァルの口ぶりから察するに、すでに話し合いでどうにかなる段階は過ぎていること。……そして、無力なわたしができることなんて、何もないってこと)

 もしも、彼が望んだ勇者としての力があれば、まだ一発逆転の可能性もあったかもしれない。けれども、異能に目覚めた気配もないこの現状では。

(愛し子なんて呼ばれたって、魔法ひとつ使えないのに。一体どうしろって言うの。もうやだ、帰りたい。元の世界に──……)

 花音がそう強く願った瞬間、足元に花型の魔方陣が咲く。蝶の鱗粉のように光の粉が周囲を埋め尽くし、ぎゅっと目を閉じる。
 喧騒が遠のいて、おそるおそる瞼を開ける。
 目をパチパチさせるが、眼前に広がる景色は見慣れた校舎だった。後ろには小ぶりな古い鐘がある。狭い空間に二人、手を繋いだ状態でそこにいた。

「……え?」
「ふむ。見たことのない景色だな。城より少々低いが、ここは見晴らしがいい」
「わたし……。本当に、戻って、きたの?」