異世界召喚された先は魔王様の寝室でした

「ああ、そうだったわね。でもさ。魔法を極める前に、他にやるべきことがあったんじゃない? 何百年も引きこもっていて、社交スキルはゼロ、使えるのは雑すぎる巨大魔法、極めつけには召喚する相手を間違える……どう考えてもポンコツ以外の何者でもないでしょうが!」
「さすが勇者。ぐうの音も出ない」
「……はっ! ちょっと待って。このままだと魔王の仲間だと思われるわよね? ってことは、巻き添えで討伐されるってこと!? どうしてくれるのよ、わたしの人生……っ!」

 ここが上空でなければ、彼の両肩をガクガク揺さぶっているところだ。

「話せばわかる。たぶん」
「ちょっと、わたしの目を見て言いなさいよ! 余計、不安になっちゃうでしょ」

 狼狽している自分のほうがおかしいのではと思うほど、ヴァルラントは冷静だった。きっと、彼にとってこういう事態は珍しくないのだろう。
 彼が心の中で何を考えているのか、出会って間もない花音には、まだわからない。