異世界召喚された先は魔王様の寝室でした

「……そんなの知らないわよ」

 勇者にせよ、聖女にせよ、どれも前の世界では関わりがない。
 異世界召喚されたからといって、不思議な力に目覚めた気配もない。あくまでも、自分は自分だ。他の何物でもない。
 しかし、ヴァルラントは頭を振り、生真面目な様子で続けた。

「君の職業だ。ふさわしいものがいいだろう」
「言っておくけど、勇者なんて無理だから。剣も魔法も使えないし、まして誰かを殺める真似なんてできないわ。聖女って柄でもないし、召喚士もピンとこないし」

 どの職業も自分には不釣り合いだ。
 だがヴァルラントには予想外の答えだったらしく、目を丸くしていた。

「だったら、どうやって生計を立てていくつもりだ?」
「え?」
「働けなければ、食べ物に困るだろう?」

 花音とヴァルラントの視線がまっすぐに交差する。

「……あなたが保証してくれるんじゃないの? わたしを召喚したんだから」
「そうか。そういう話になるのか」