「さっきも言ったが、帰す方法は知らない。突然こんな場所に連れてこられて、君が怒るのも無理はないだろう。だが僕は……君に会えて嬉しかった」
意図せず純真な心を向けられてしまい、拍子抜けした。
シーツに両手をつき、完全なる敗北を悟った。こんなさびしい人間を前にして怒りを持続できるほど、非情ではないつもりだ。
「……わたしの負けよ。名前を聞いていなかったわね。わたしは芝崎花音。花音でいいわ。あなたは?」
魔王は花音の態度に戸惑った様子だったが、質問には律儀に答えてくれた。
「ヴァルラント・フォンティースだ」
「……言いにくいわね……ヴァルでいい?」
略し方に思うところがある顔をされたが、肩をすくめるだけで見逃してくれるらしい。
「まあ、異世界人なら致し方あるまい。カノンという名前の響きはこちらと同じだな」
「そうなの? とにかく、ここにいてもしょうがないわ。兵士の前に案内して。わたしが話をつけてくるわ」
ベッドから降りようとしたところで、ローファーを履いたままだったことに気づく。できるだけシーツが汚れないように、そろりそろりと這うように動き、床に足をつける。
意図せず純真な心を向けられてしまい、拍子抜けした。
シーツに両手をつき、完全なる敗北を悟った。こんなさびしい人間を前にして怒りを持続できるほど、非情ではないつもりだ。
「……わたしの負けよ。名前を聞いていなかったわね。わたしは芝崎花音。花音でいいわ。あなたは?」
魔王は花音の態度に戸惑った様子だったが、質問には律儀に答えてくれた。
「ヴァルラント・フォンティースだ」
「……言いにくいわね……ヴァルでいい?」
略し方に思うところがある顔をされたが、肩をすくめるだけで見逃してくれるらしい。
「まあ、異世界人なら致し方あるまい。カノンという名前の響きはこちらと同じだな」
「そうなの? とにかく、ここにいてもしょうがないわ。兵士の前に案内して。わたしが話をつけてくるわ」
ベッドから降りようとしたところで、ローファーを履いたままだったことに気づく。できるだけシーツが汚れないように、そろりそろりと這うように動き、床に足をつける。



