やたらと長い歴史を誇る学び舎には、時計台がある。
経年劣化により、現代風に作り替えられた時計台は真新しく、その上部に吊るされた年代物の鐘は小ぶりながらも存在感がある。丹念に磨き上げられているのか、小さな鐘はほのかに光を帯びていた。
時計台の下で、芝崎花音は空を仰ぐ。
鳥が旋回する青空には、薄雲が淡く広がっていた。太陽が沈む気配はまだない。吹き抜けた春風が黒髪を舞い上げ、花音はそっと手で押さえる。
そのとき、ゴーンゴーンと鐘が鳴った。
毎日決まった時刻、鐘は自動制御によって規則正しく打ち鳴らされる。高く澄んだ音が、学園中に響いていく。
下校時間を知らせる音を聞きながら、花音は一歩を踏み出す。しかし、数歩進んだところで足が止まる。
「なに……これ……」
足元には円形の暗闇が広がっている。まるで落とし穴みたいだと思った直後、足が沈む感覚に襲われた。誰かに助けを求める手は宙を切り、声にならない悲鳴ごと、花音の身体は闇の底へと飲み込まれた。
その様子を一部始終見ていたのは、木陰で休む小鳥だけだった。
経年劣化により、現代風に作り替えられた時計台は真新しく、その上部に吊るされた年代物の鐘は小ぶりながらも存在感がある。丹念に磨き上げられているのか、小さな鐘はほのかに光を帯びていた。
時計台の下で、芝崎花音は空を仰ぐ。
鳥が旋回する青空には、薄雲が淡く広がっていた。太陽が沈む気配はまだない。吹き抜けた春風が黒髪を舞い上げ、花音はそっと手で押さえる。
そのとき、ゴーンゴーンと鐘が鳴った。
毎日決まった時刻、鐘は自動制御によって規則正しく打ち鳴らされる。高く澄んだ音が、学園中に響いていく。
下校時間を知らせる音を聞きながら、花音は一歩を踏み出す。しかし、数歩進んだところで足が止まる。
「なに……これ……」
足元には円形の暗闇が広がっている。まるで落とし穴みたいだと思った直後、足が沈む感覚に襲われた。誰かに助けを求める手は宙を切り、声にならない悲鳴ごと、花音の身体は闇の底へと飲み込まれた。
その様子を一部始終見ていたのは、木陰で休む小鳥だけだった。



