「そーだ! しりとり! こういう時はしりとりしながら歩くべきだよね!」
昔、長い道を歩く時に母としていた遊びだ。
距離を誤魔化すには丁度良い。
「あたしからねっ! しりとり……『リンゴ』!」
独断的に始めたしりとりの二番手としてゼルを指差す。
「ベタだな……。『ゴーヤ』」
「や……『焼き鳥?』」
「アンタまで言うなっ! しかも笑ってんじゃねェよっ!」
「えー、また『り』? 何? そういう手? っつーか、じゃあ蒸し鶏とかもアリなわけぇ?」
「固いこと言わない言わない」
「いいけどさぁー、別に。んじゃ、『リブロース』!」
別にルールを作ったわけでもないのに食べ物の名前ばかりを連呼して彼らが目的の家についたのは、しりとりがちょうど三十個目、エナの番の時だった。
とはいえ、見事に『り』ばかりを回してくるジストの性格の悪さに文句をいうだけで、一向に『り』で始まる言葉は出てこない。

