「情報が回ってこねェって……ジストにもそんなことがあるンだな」


意外そうなゼルの言葉にジストは肩を竦めた。


「ユーノからトルーアに来た人間が居ないんだからしょうがないでしょ、まあだから何かあったんだろうなとは思ってたけど」


ユーノは片田舎だ。港町とはいえ。

船が運航していなければ、人の流れは途絶えてしまう。

ユーノから来た人間が居ないと断言したジストは少なくとも現在船が運航していないことを知っていたことになる。


「なんで先に言わないの」


船が出ていないと知っていたなら、他の港から行くことも考えたというのに。

その追求をジストはのらりくらりとかわす。


「情報屋としては気になるじゃないか、ジストさん、仕事熱心だから」


にっこりと笑うジストにエナは溜め息を吐いた。

ジストが仕事熱心だというのなら、世界中の人が仕事熱心になってしまう。


「ま、いいや。今更言っても仕方ないし」


どうせジストはこれ以上答えやしないのだろうと見切りをつけて話題を変えた。


「で? 仕事熱心なジストはどう思った? この町に来てみて」

「うーん、厄介そうだね」


曖昧ではあるが率直な感想にエナは足を止め、親指の爪を噛んだ。


「エナちゃん、噛まないの。爪の形が歪んじゃうでしょ」


ジストがその手を掴んで止める。

エナはジストの大きな手を見つめた後、顔を上げてジストの目を凝視した。


「この町を早く出た方がいいって……そゆコト?」

「……ま、そういうことだね」


ジストが頷くと、ゼルが横から口を挟んだ。


「でも、こんなけ塞ぎこんでる町で船なんか出ねェだろ?」


確かにそれは尤もな意見だ。

だが、エナはゼルに蔑むような視線を投げた。