男が発した言葉にエナの血は一瞬、凍り付いた。
目を瞠り、息を呑む。
その際に全身から放たれた、突き刺すような感情の発露に男が口元を引き締めたことを、彼女は気付かなかった。
「な、んで……そのこと……!」
「これしきのことでそこまで動揺されるとは……」
エナにとって、それはもう動揺の域を越えていた。
心臓が痛いほど激しく脈打つ。
「貴女は余りにも未熟だ……。だからこそ取引も出来るというものですが……」
エナは外套で見えぬ男の目を睨みつけた。
そして、気取られないように深く息を吐きだした。
目の前の男が一体どのような目的で今の言葉を紡いだのか。
読みかねて、エナはただ注意深く次に発するべき言葉を探した。
「何を、知ってんの」
「貴女の魂に刻まれた過去、全てを」
齎された言葉は余りにも抽象的で、何も知らないのか全てを知っているのか判断に迷う。
「過去を知るなど、私には造作もないこと」
誘導しているのか、それとも本当に調べたというのか……遥か辺境の地で起こった『あの事』を。
「私は、貴女を救ってさしあげたいのですよ」
好意的であるかの如き言葉は、しかし決して好意的なそれでは無い。
そうと知りつつ、エナの心は揺れた。
目を瞠り、息を呑む。
その際に全身から放たれた、突き刺すような感情の発露に男が口元を引き締めたことを、彼女は気付かなかった。
「な、んで……そのこと……!」
「これしきのことでそこまで動揺されるとは……」
エナにとって、それはもう動揺の域を越えていた。
心臓が痛いほど激しく脈打つ。
「貴女は余りにも未熟だ……。だからこそ取引も出来るというものですが……」
エナは外套で見えぬ男の目を睨みつけた。
そして、気取られないように深く息を吐きだした。
目の前の男が一体どのような目的で今の言葉を紡いだのか。
読みかねて、エナはただ注意深く次に発するべき言葉を探した。
「何を、知ってんの」
「貴女の魂に刻まれた過去、全てを」
齎された言葉は余りにも抽象的で、何も知らないのか全てを知っているのか判断に迷う。
「過去を知るなど、私には造作もないこと」
誘導しているのか、それとも本当に調べたというのか……遥か辺境の地で起こった『あの事』を。
「私は、貴女を救ってさしあげたいのですよ」
好意的であるかの如き言葉は、しかし決して好意的なそれでは無い。
そうと知りつつ、エナの心は揺れた。

