雨の闖入者 The Best BondS-2


「その身から放たれる空気がどれほど暴力的であるか、どれほど目を引く色をしているか、貴女は理解していらっしゃらないでしょうね」


男が一歩近づく。

エナは反射的に一歩後ずさる。


「理解してらっしゃらないからこそ、貴女は脆く、美しい。それ故に貴女は強い……」


男はもう一歩足を進めたところで立ち止まった。


「その魂に共犯を持ちかけたのは私の間違いというもの……。取引を、致しましょう」


エナは片眉をぴくりと動かした。


「まだ、わかんないの?」


共犯にはならない。

取引もしない。

この男の言う通りになど、なってたまるか。

エナは武器を強く握った。

実体の無い相手に武器の有無など関係ないことはわかっていたが、それがエナの精一杯の威嚇の形だった。


「いいえ。おそらく貴女が仲間と呼ぶあの二人よりも、貴女のことを存じております。『悪魔に魂を売った娘』……エナ=D=アイズ」