「その身から放たれる空気がどれほど暴力的であるか、どれほど目を引く色をしているか、貴女は理解していらっしゃらないでしょうね」
男が一歩近づく。
エナは反射的に一歩後ずさる。
「理解してらっしゃらないからこそ、貴女は脆く、美しい。それ故に貴女は強い……」
男はもう一歩足を進めたところで立ち止まった。
「その魂に共犯を持ちかけたのは私の間違いというもの……。取引を、致しましょう」
エナは片眉をぴくりと動かした。
「まだ、わかんないの?」
共犯にはならない。
取引もしない。
この男の言う通りになど、なってたまるか。
エナは武器を強く握った。
実体の無い相手に武器の有無など関係ないことはわかっていたが、それがエナの精一杯の威嚇の形だった。
「いいえ。おそらく貴女が仲間と呼ぶあの二人よりも、貴女のことを存じております。『悪魔に魂を売った娘』……エナ=D=アイズ」

