雨の闖入者 The Best BondS-2

「当然でしょ」


それは自己暗示のようなものだった。

大丈夫だと言い聞かせたかったのかもしれない。自分自身に。


「それでこそ、エナだ」


ゼルは大きな口で、にかっと笑った。


「……にしても、さみぃな。さっさと帰って風呂入らねェと風邪引いちまわぁ」


確かにエナも寒かったが、にやりと意地悪い笑みを浮かべる。


「ああ、湖に落ちたもんねー」

「……お前な、楽しそうに言うんじゃねェよ。性格悪ィぞ」


苦虫を噛み潰したような顔のゼルの様子に余計楽しくなってしまったエナは悪戯っ子そのものの顔をした。


「強(シタタ)かって言って」

「強かってのは面の皮が厚いってェことなンだな」


即答で返ってきた答えにエナは素直に感心した。


「……あんたも腕上げたねー」


人は日々、成長するということか。

毎日からかわれ続けるゼルが彼らとより気持ちよく付き合って行くための処世術を身に付けるのも、そんな彼らの影響を受けてしまうのも、その素直な性格上、仕方が無いと言えるだろう。

だが、ゼルには余り毒舌を覚えて欲しくはないなとエナは思った。