*
「珍しいよな?」
山の中、がさがさと背の丈程もある草を掻き分けていたエナは歩みを止めて振り返った。
「え? 何が?」
何処にでも生えてる草だけど? と言うエナにゼルは背後から声を飛ばす。
「だァら、ジストだよ、ジストっ!」
「ああ、そのコト」
何でもないことのように答え再度雑草と格闘を始めながらも、エナは今朝の様子を思い起こす。
どう考えても、今日の彼はおかしかった。
「風邪なんて引きそーにないヤツが、あんな……」
「何、ゆってんの?」
立ち止まり、今度こそしっかりと振り返る。
「風邪なわけ、ないじゃん」
「は? じゃーなんだってんだよ」
触れると切れてしまいそうな刺々しい雰囲気を纏っていたのは、おそらく不機嫌だというわけでも、ましてや体調のせいなどでもない。
「あんたホント、何聞いてたの? どーみたって、悪夢に囚われたんでしょーが」
周りとの交流を拒絶するあの雰囲気の名は『憔悴』。
そうでなければ、ジストが気付かない筈がない。
どの湖の近くに小屋があるのかを確かめておきたかったエナが予定の変更を申し出た時、「気になること」と言うのに留めたあの時に。
その後、名を呼ばれた時に内心ひやりとしたのを隠すため、笑顔を作ってしまった。
いよいよバレたかと思ったが、ジストが口にしたのは全然別のことで。
ほっとした反面、ジストの憔悴度合に心が騒いだ。
「珍しいよな?」
山の中、がさがさと背の丈程もある草を掻き分けていたエナは歩みを止めて振り返った。
「え? 何が?」
何処にでも生えてる草だけど? と言うエナにゼルは背後から声を飛ばす。
「だァら、ジストだよ、ジストっ!」
「ああ、そのコト」
何でもないことのように答え再度雑草と格闘を始めながらも、エナは今朝の様子を思い起こす。
どう考えても、今日の彼はおかしかった。
「風邪なんて引きそーにないヤツが、あんな……」
「何、ゆってんの?」
立ち止まり、今度こそしっかりと振り返る。
「風邪なわけ、ないじゃん」
「は? じゃーなんだってんだよ」
触れると切れてしまいそうな刺々しい雰囲気を纏っていたのは、おそらく不機嫌だというわけでも、ましてや体調のせいなどでもない。
「あんたホント、何聞いてたの? どーみたって、悪夢に囚われたんでしょーが」
周りとの交流を拒絶するあの雰囲気の名は『憔悴』。
そうでなければ、ジストが気付かない筈がない。
どの湖の近くに小屋があるのかを確かめておきたかったエナが予定の変更を申し出た時、「気になること」と言うのに留めたあの時に。
その後、名を呼ばれた時に内心ひやりとしたのを隠すため、笑顔を作ってしまった。
いよいよバレたかと思ったが、ジストが口にしたのは全然別のことで。
ほっとした反面、ジストの憔悴度合に心が騒いだ。

