雨の闖入者 The Best BondS-2

二人が部屋を出ていくのを確認したジストは手に持っていたフォークを皿の上へと投げ捨てた。


もう一口だって食べたくない。


その様子を見ていたイェンがジストに近づくが、それを掌をひらひらと振って追い返す。

一人にしてくれ、という意思表示にイェンが気付いたかどうかはわからないが、イェンは頭を一つ下げて部屋を退室した。


細かな雨の音だけが広がる部屋の中。

ジストは身動ぎもせずにしばらく冷えきったかぼちゃのスープを見つめていた。

否、其の目は何も映してはいなかった。


しばらくして思い出したように煙草に火を点けてみたものの、一口吸ってすぐに灰皿に押し付ける。


胸のあたりがムカムカしたのだ。


胃の辺りを押さえて、ジストは虚ろな瞳のまま、上品なシャンデリアを仰いだ。

もう片方の手の甲を額に当てて瞼を閉じる。

溜め息に似た呼吸が口から漏れる。


「何故……今更……」


今にも泣き出しそうな声を聞いた者は誰一人居なかった。





.