雨の闖入者 The Best BondS-2

「今日……二人で行ってもらっていいかな」


とてもじゃないが雨の中を歩き回る気になれなかった。

エナの顔が心配に曇る。


「……いいけど……」

「エナ命のジストが珍しいな。体調でも壊したンか?」


夢見が悪かったと言ったとはいえ、まさか悪夢のせいで調査を辞退するなどとは露ほども考えなかったのだろう。

ゼルは「熱か? 腹か? 頭痛でもすンのか?」と聞いてくる。


「………」


結局彼がこの問いに答えることはなく、
代わりに不機嫌そうでいて、沈んだ表情が其処に在るだけだった。


「……ま、いいじゃん。どうせ、散策するだけなんだし、二人でも」


パンとサラダとかぼちゃのスープとヨーグルトをきっちり二人分食べ終えて立ち上がったエナがジストに視線を投げたのがわかったが、やはりジストは顔を上げる気にはなれなかった。


「雨の瘴気に中(ア)てられたのかもね。今日は一日ゆっくりしてなよ」


無言を貫き通す何時になく頑なな態度のジストにこれ以上話をすることも、話をさせようとすることも諦めたらしいエナはラファエルを抱え上げた。

ゼルの肩をぽんと叩き、親指で「行こう」という意味を含めて部屋の出口を指し示し、ゼルも小さな嘆息の後、其れに倣う。


「体調悪いなら、あったかいカッコして寝んだぞ。それから、せめてパンくらいは食わねェと体力持たねェぞ」


サラダばかりを突くジストを諌めたゼルは、

「ゼル、ママみたい」

とエナに言われ、

「うっせ」

と、軽口を言い合いながら部屋を出て行った。