雨の闖入者 The Best BondS-2



「そんなにも、そのガキがいいのか……。実の家族よりも」

「家族と同じように大事に思って何が悪いの?!」


元来気の強いナナが怒鳴り返す。


「……同じように……?」


ナナの言葉に眉がぴくりと動く。

男のその心情を少年は鏡に映すかの如く読み取ることが出来た。


(同じじゃないよ…)


少年は自嘲気味に思う。


同じではなかった。

同じであるはずがなかった。

惜しみない愛情を注がれ、ただ可愛がられるだけの少年は家族ではなく、全く別の対象だった。


ペットか、もしくは。


(あの意地悪な兄さんが、姉さんに向ける気持ちと同じ……)


別室から覗く七歳年上の息子は今、目の前の男と全く同じ目を少年に向けている。


嫉妬と憎悪。


その対象が小さな小さな少年であることに罪悪感を覚えない程、少年は女達の全てを彼らから奪ってしまった。

血が繋がらない故に向けられた愛情が全ての原因だった。


「……やめてよ……」


そんな愛情の交錯など求めて居なかった少年は静かに言った。


「僕は一人で死にたい」


壊したくなかった。

全てを壊せる程自分に向けられた『愛情』に少年は畏怖した。

『愛情』には『憎情』が付き纏うことを、少年は肌で感じていたのだ。

そんな愛情に絡めとられて死んでいくのは真っ平だった。

言葉では理解しないまでも、心がそう判断した。