だが、たった一ヶ月。
それだけの月日で男は当初からは想像も出来ない程、変わってしまった。
否、少年が変えてしまったのだ。
いつぶりかの風呂で汚れを落とした少年が、痩せこけていても何ら遜色無い程の類稀なる美貌でもって、男の妻も娘も虜にしてしまったから。
一週間に一度出稼ぎから帰って来る男と、家を守る妻との間で繰り広げられる論争に疲れているのは、なにも男と妻だけでなく、それを聞いている彼らの双子の子ども同じだった。
汲々(キュウキュウ)としたその雰囲気にまだ五歳になったばかりの少年は小さいながらに良心の呵責を覚え、
取り上げられた布団の代わりの布を頭から被って小さく丸まって、その場をやり過ごすことを覚えた。
男から罵声を浴びせられている内は良かった。
怖かったが、週に一度だと思えば耐えられた。
父親の態度を真似る息子が日々陰険な仕打ちをしてきても、たいして気にならなかった。
置いてもらっているのだから、そこまでの贅沢は望んではいけないのだと、少年はちゃんとわかっていたからだ。
だが、妻と娘が少年を庇い「おまえが気にすることじゃないんだよ」と言う度に心は痛んだ。
少年が此処に来たことにより、一つの家庭が破綻しかかっていることは誰の目から見ても明らかだった。
少年自身、此処に居てはいけないのだということを理解していた。
だが、まだたった五歳の子ども。
行くあてもなければ、一人で生きていける筈もない。
なにより、妻と娘はとてもよくしてくれる。
少年は、一つの家庭を壊してしまうことよりも、自分の欲求に従っている方が心地よかったのだ。
週に一度、男が家の中で暴れ、乱暴されるとわかっていても、一人になってあの暗くて寒い路地裏に戻ることを思えばずっとましだった。
男が仕事に行ってしまえば一週間は平和な日々が待っている。
双子の片割れである息子の陰湿な虐めは日々エスカレートしていて、それなりに辛い時もあるけれど、
自分を拾ってくれた命の恩人からの罵声と現在大事にしてくれている人の泣き叫ぶような声が行き交うこの夜に比べれば取るに足らない小さなことだ。
それだけの月日で男は当初からは想像も出来ない程、変わってしまった。
否、少年が変えてしまったのだ。
いつぶりかの風呂で汚れを落とした少年が、痩せこけていても何ら遜色無い程の類稀なる美貌でもって、男の妻も娘も虜にしてしまったから。
一週間に一度出稼ぎから帰って来る男と、家を守る妻との間で繰り広げられる論争に疲れているのは、なにも男と妻だけでなく、それを聞いている彼らの双子の子ども同じだった。
汲々(キュウキュウ)としたその雰囲気にまだ五歳になったばかりの少年は小さいながらに良心の呵責を覚え、
取り上げられた布団の代わりの布を頭から被って小さく丸まって、その場をやり過ごすことを覚えた。
男から罵声を浴びせられている内は良かった。
怖かったが、週に一度だと思えば耐えられた。
父親の態度を真似る息子が日々陰険な仕打ちをしてきても、たいして気にならなかった。
置いてもらっているのだから、そこまでの贅沢は望んではいけないのだと、少年はちゃんとわかっていたからだ。
だが、妻と娘が少年を庇い「おまえが気にすることじゃないんだよ」と言う度に心は痛んだ。
少年が此処に来たことにより、一つの家庭が破綻しかかっていることは誰の目から見ても明らかだった。
少年自身、此処に居てはいけないのだということを理解していた。
だが、まだたった五歳の子ども。
行くあてもなければ、一人で生きていける筈もない。
なにより、妻と娘はとてもよくしてくれる。
少年は、一つの家庭を壊してしまうことよりも、自分の欲求に従っている方が心地よかったのだ。
週に一度、男が家の中で暴れ、乱暴されるとわかっていても、一人になってあの暗くて寒い路地裏に戻ることを思えばずっとましだった。
男が仕事に行ってしまえば一週間は平和な日々が待っている。
双子の片割れである息子の陰湿な虐めは日々エスカレートしていて、それなりに辛い時もあるけれど、
自分を拾ってくれた命の恩人からの罵声と現在大事にしてくれている人の泣き叫ぶような声が行き交うこの夜に比べれば取るに足らない小さなことだ。

