「違う違う! そんなこと言う為にこんな変態な真似するわけないじゃないか! 言ったでしょ、覗きだよ覗き。本当だってば」


力説する内容が、少しどころかかなりずれている。

変態な真似をしていると認めた上で、覗きを正当化しようとする傍若無人ぶりを発揮するジストに、エナは思いっきり湯をかけてやった。


「自信満々で言うな! 出てけ! この変態野郎!」


「正直に言ってるだけなのに怒ることないじゃないか。拗ねちゃうよ、ジストさん」


「いーから出てけッ!」


ちぇーっと不満の声を漏らした後ジストはエナの言葉に従うべく立ち上がり浴場を立ち去ろうとしたのだが。


あ。と短い音を発し、ジストが振り返る。

その後に続いた万年発情変態男の予想外の言葉にエナは度胆を抜かれてしまった。


「ピンクは好みだけど、紐は動き回ると危ないよ?」


その言葉の意味するところをはっきりと正しく理解したエナは真っ赤なのか蒼白なのか判断しかねる顔色になり、口を何度かぱくぱくさせた後、もう誰の姿もなくなった浴場の出入口へと殺意を込めて怒鳴った。


「!!! 殺させろぉー!! こン腐れ外道がぁっ!!」


逆上せかかっている上に急激な血圧の上昇で死んでしまったら末代まで呪ってやろうと心に誓った。


その後の食事で始終沈黙の威嚇を与えられ続け、遂にはおやすみの挨拶さえ無視されたジストは、どうせなら全部綺麗しっかり見てやればよかったと、ほんの少しだけ後悔したのだという。








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