「それが……誠に申し訳ないのですが、備蓄が底をついてしまいましたので、あと六時間程お待ちいただけますかね? 待てないようでしたら、お好きにしてください」
それは暗に「お前らに食わせる物は無い」と言っているのがありありと伝わってくる言葉だった。
少なくとも備蓄がまだあることをエナは知っていたのだから。
「……因果応報って言葉、知ってる?」
「ええ、存じ上げておりますよ。ついでに言えば働かざるもの食うべからずという言葉も」
家主の笑顔と返答にエナが奥歯を鳴らした。
「……その言葉、忘れんじゃないわよ」
怒鳴ることを抑えた低い声。
それを聞いたジストとゼルは同時に肩を竦めた。
「あーあ。エナちゃん怒らせちゃった。後悔しても知―らない」
「ついでにコイツ、三倍返し程度で済ませてくれるよーなタマじゃねーから。そこんとこ、覚えといたほうがイイな」
うんうんと頷きながら言うゼルの耳をエナが掴む。
「荷物纏めて。出てくよ」
「いてェ! いてェよ! わーったから引っ張んなって! 完璧八つ当たりじゃねーかっ!」
屋敷に取って返そうとしたエナの背に、気弱そうなくせに毛の生えた心臓を持っているらしい家主がにこやかに声をかけた。
「ああ、台風の影響で、どの道、一ヶ月ほどは大陸に渡る船は出ませんからね」
エナは振り返った。
その表情は見る者が見れば口元を引き攣らせるに違いない、悪魔の笑顔。
このやりとりから二日後の朝、家主は思い知ることになる。
宝物庫の鍵が開いているとの報告を受け、部屋に入った家主は開いた口を塞ぐことも忘れたという。
其処に保管されていた筈の宝石と骨董品のいくつかが姿を消していたのだから。
更に、屋敷内の食料という食料が根こそぎ無くなっているとコックが申告してきた直後、港に泊めてあった中でも一番立派な船が一艘消えてしまったとの情報が入った時に手渡された一枚の紙を見て家主はついに膝から崩れ落ちた。
『一方的な契約破棄につき、正当な報酬及び違約金を併せていただきました』
因果応報、ざまーみろ、と書き添えられた文字は蛍光黄色のマーカーペンでどっしりとした力強さがあった。
それは暗に「お前らに食わせる物は無い」と言っているのがありありと伝わってくる言葉だった。
少なくとも備蓄がまだあることをエナは知っていたのだから。
「……因果応報って言葉、知ってる?」
「ええ、存じ上げておりますよ。ついでに言えば働かざるもの食うべからずという言葉も」
家主の笑顔と返答にエナが奥歯を鳴らした。
「……その言葉、忘れんじゃないわよ」
怒鳴ることを抑えた低い声。
それを聞いたジストとゼルは同時に肩を竦めた。
「あーあ。エナちゃん怒らせちゃった。後悔しても知―らない」
「ついでにコイツ、三倍返し程度で済ませてくれるよーなタマじゃねーから。そこんとこ、覚えといたほうがイイな」
うんうんと頷きながら言うゼルの耳をエナが掴む。
「荷物纏めて。出てくよ」
「いてェ! いてェよ! わーったから引っ張んなって! 完璧八つ当たりじゃねーかっ!」
屋敷に取って返そうとしたエナの背に、気弱そうなくせに毛の生えた心臓を持っているらしい家主がにこやかに声をかけた。
「ああ、台風の影響で、どの道、一ヶ月ほどは大陸に渡る船は出ませんからね」
エナは振り返った。
その表情は見る者が見れば口元を引き攣らせるに違いない、悪魔の笑顔。
このやりとりから二日後の朝、家主は思い知ることになる。
宝物庫の鍵が開いているとの報告を受け、部屋に入った家主は開いた口を塞ぐことも忘れたという。
其処に保管されていた筈の宝石と骨董品のいくつかが姿を消していたのだから。
更に、屋敷内の食料という食料が根こそぎ無くなっているとコックが申告してきた直後、港に泊めてあった中でも一番立派な船が一艘消えてしまったとの情報が入った時に手渡された一枚の紙を見て家主はついに膝から崩れ落ちた。
『一方的な契約破棄につき、正当な報酬及び違約金を併せていただきました』
因果応報、ざまーみろ、と書き添えられた文字は蛍光黄色のマーカーペンでどっしりとした力強さがあった。

