雨の闖入者 The Best BondS-2

雨によって現実と夢を獣が繋いでいて、その獣は夢の世界に居たので蹴散らしてきました、など、一体どんな顔をして説明すればよいのだろう。

信じるわけがないではないか。

身をもって体感した自分達ですら未だに信じられないのだから。


「異常気象でも説明つくかアホっ! アレはだなあ! その、なんつーか、雨を降らしてるヤツが居たんだよ!」


要点だけをわかりやすく纏めれば、確かに其の通りなのでエナ達もその言葉に頷いた。

家主が納得するとは思っていなかったが。


「どうやってですか」


あっさりとした切り替えしに、またしばしの沈黙が訪れる。


「知らないケド! そいつ追い出して雨止んだんだし、それでいーじゃん!」


それも其の通りだったので、ゼル達は頷く。


「証拠はありますか?」

「……証、拠……?」


反芻しながら、エナは眉を顰めた。そうきたか、と思ったからだ。


「はい、こちらとしては報酬を払うわけですから、あなた方が解決してくれたのだという証拠を求めるのは当然というものでしょう?」


あくまでもしれっと言ってのける家主は、昨日まで何かと言えば頭を下げていた人物と同じだとはどうしても思えない。


「そんなモン先に言っとけよ!」

「言わなくてもわかってらっしゃるかと……」


このままでは不毛な掛け合いを繰り返すだけだと察したジストが溜め息まじりに結論を急がせた。


「じゃあ、証拠が無ければ船は渡さないってコトだよね? どーする? エナちゃん」


証拠などあるわけがない。

全てが夢の中での出来事だったし、その夢も瓦解してしまった。

幸か不幸か死闘で負った怪我の悉(コトゴト)くも夢の産物と共に消えてしまったから、獣と戦いましたと言っても信用されないだろう。

考えることから現実逃避したくなったエナはとりあえず話題を変える努力をすることにした。


「……とりあえず、ご飯、食べさせてくれる?」


だが、次の家主の一言にエナの血管がひくりと動くことになる。