エピローグ.
雨の音が次第に小さくなっていく。
フードを目深に被った男は其れを見て、物悲しそうに瞳を細めた。
夢と現実を繋いでいた雨という媒体が今、その効力を無くし、自然が持つ治癒力によって正しい姿へと戻っていく。
雨だけではない。
蝕まれていた井戸の水も、浴槽に張られた湯も、全てが浄化されていく。
水泡に帰した願いを嘲笑うかのように雨は細くなり、人々は窓を開けた。
そして、空を見上げる。
つられるように顔をあげた先に広がる薄く大きな雲がゆっくりと裂けていく。
全てが思い通りにならないことだらけだった。
夢と現実を繋ぎ、そこに彼らを捕らえようと思っていた。
もう少しで心を殺すことが出来たのに、紅の男は少女によってその罠を破綻させた。
義手の男にしても同じ。
わざわざ夢と現実の狭間に招き、彼が最も望む者の姿を呼び寄せた。
生きている魂の中に存在する強い想いと後悔の念。
それを核に、死んだ魂に一時の時間を与えた。
死んだ魂にはもはや思惟は無い。
剣士の想いによって姿を変える死者は、剣士の心を後悔の念の中で押し潰してくれると信じていた。
それなのに、またしてもあの少女が邪魔をした。
そして、あの少女までも、戦いの最中で本来の輝きを取り戻してしまった。
実体を直接殺してしまおうと眠る彼らの元を訪れた、その時に。
少女が呟いた。
「……あたしは、戦う」
あの時感じた眩しさと引力は、最初に接触した時の輝きとは比べ物にならないほどの光を放ち、もはや直視することすらかなわなかった。
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雨の音が次第に小さくなっていく。
フードを目深に被った男は其れを見て、物悲しそうに瞳を細めた。
夢と現実を繋いでいた雨という媒体が今、その効力を無くし、自然が持つ治癒力によって正しい姿へと戻っていく。
雨だけではない。
蝕まれていた井戸の水も、浴槽に張られた湯も、全てが浄化されていく。
水泡に帰した願いを嘲笑うかのように雨は細くなり、人々は窓を開けた。
そして、空を見上げる。
つられるように顔をあげた先に広がる薄く大きな雲がゆっくりと裂けていく。
全てが思い通りにならないことだらけだった。
夢と現実を繋ぎ、そこに彼らを捕らえようと思っていた。
もう少しで心を殺すことが出来たのに、紅の男は少女によってその罠を破綻させた。
義手の男にしても同じ。
わざわざ夢と現実の狭間に招き、彼が最も望む者の姿を呼び寄せた。
生きている魂の中に存在する強い想いと後悔の念。
それを核に、死んだ魂に一時の時間を与えた。
死んだ魂にはもはや思惟は無い。
剣士の想いによって姿を変える死者は、剣士の心を後悔の念の中で押し潰してくれると信じていた。
それなのに、またしてもあの少女が邪魔をした。
そして、あの少女までも、戦いの最中で本来の輝きを取り戻してしまった。
実体を直接殺してしまおうと眠る彼らの元を訪れた、その時に。
少女が呟いた。
「……あたしは、戦う」
あの時感じた眩しさと引力は、最初に接触した時の輝きとは比べ物にならないほどの光を放ち、もはや直視することすらかなわなかった。
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