けれど、ゼルは言ってくれた。
『エナがエナじゃなくなることなんて』と。
気弱になっていた自分の背中を押して、信じさせてくれた。
そしてジストが言ってくれた。
『護らせてくれりゃそれでいい』と。
頼ることは悪いことじゃないのだと思わせてくれた。
だから、言える。
だから、出来る。
今はもう。
「あたしがあたしじゃなくなることも、死ぬことも、怖くない。」
それは諦めではなく。
さりとて虚勢でもなく。
心からの言葉。
彼らはただ行動を共にするだけの同胞じゃないのだから。
彼らは、背中を預けることが出来る、仲間だ。
少なくとも、今、この時だけは。
「だから今を生きる為に、あたし、精一杯になれる。」
沢山の矛盾が存在するこの心の中で、たった一つの信念を胸に抱くことが許された。
自身の心と自身の生き方を今、ようやく一つに出来る。
「……『あたし』は、戦う」
逃げるのは『あたし』じゃない。
護られているのは『あたし』じゃないのだと、エナの瞳が告げていた。
彼女がこの光を目に宿したが最後、どうあっても意志を変えないのは二人とて知っていた。
我儘な彼女が、最も我儘になる瞬間だ。
「あたしをあたしで居させて」
こうなっては誰も手がつけられない。
ゼルは剣を持った手で器用に耳の後ろを掻いた。
「……仕方ねェか……」
「我儘な姫サマだこと。ま、そこがイイんだけどね」
わざとらしい溜め息がジストも腹を括ったことを伝える。
「でも、エナ。ソレじゃ歯が立たねェぞ」
ヌンチャクを顎で示すゼルにエナはふてぶてしく、にっ、と笑った。
「コレ、なーんだっ?」
エナが、ヌンチャクの先端を指差した。
「? ヌンチャクだろ? ヘンな鞭っつーか……」
得物を持つ手の親指をぴんと伸ばすエナは明らかに何かを企んでいる顔で。
『エナがエナじゃなくなることなんて』と。
気弱になっていた自分の背中を押して、信じさせてくれた。
そしてジストが言ってくれた。
『護らせてくれりゃそれでいい』と。
頼ることは悪いことじゃないのだと思わせてくれた。
だから、言える。
だから、出来る。
今はもう。
「あたしがあたしじゃなくなることも、死ぬことも、怖くない。」
それは諦めではなく。
さりとて虚勢でもなく。
心からの言葉。
彼らはただ行動を共にするだけの同胞じゃないのだから。
彼らは、背中を預けることが出来る、仲間だ。
少なくとも、今、この時だけは。
「だから今を生きる為に、あたし、精一杯になれる。」
沢山の矛盾が存在するこの心の中で、たった一つの信念を胸に抱くことが許された。
自身の心と自身の生き方を今、ようやく一つに出来る。
「……『あたし』は、戦う」
逃げるのは『あたし』じゃない。
護られているのは『あたし』じゃないのだと、エナの瞳が告げていた。
彼女がこの光を目に宿したが最後、どうあっても意志を変えないのは二人とて知っていた。
我儘な彼女が、最も我儘になる瞬間だ。
「あたしをあたしで居させて」
こうなっては誰も手がつけられない。
ゼルは剣を持った手で器用に耳の後ろを掻いた。
「……仕方ねェか……」
「我儘な姫サマだこと。ま、そこがイイんだけどね」
わざとらしい溜め息がジストも腹を括ったことを伝える。
「でも、エナ。ソレじゃ歯が立たねェぞ」
ヌンチャクを顎で示すゼルにエナはふてぶてしく、にっ、と笑った。
「コレ、なーんだっ?」
エナが、ヌンチャクの先端を指差した。
「? ヌンチャクだろ? ヘンな鞭っつーか……」
得物を持つ手の親指をぴんと伸ばすエナは明らかに何かを企んでいる顔で。

