行動を共にして、たった三ヶ月。
だが、其処には確かに阿吽の呼吸が存在していた。
強さを得た者達だけがわかる独特の空気とでも言おうか。
だが、そんな二人を見たエナが「カッコイイー」と思うような可愛い性格をしていないことを二人はどうやら見落としていたようで。
否、今までの彼女ならむしろ自分から面倒だからとか、女の子だからとか適当な理由を付けてでも二人に事の処理を押し付けていたかもしれない。
だが、この一件の中でエナに起こった、些細だが確実な変化を彼らはまだ見抜いていなかった。
「ちょっと待て。」
はっきりと意志を込めて告げるその声は強制力を宿していて、彼らは出鼻を挫かれたことに不満の色を湛えながら振り返った。
遠慮会釈なくジストの服で身を清めたエナは、その汚れた服をジストへと投げ返した。
(つーか……このまま返すかな、普通……)
ジストの呆れを含んだ心の声は次なるエナの言葉によって出口を失う。
「カッコつけんな。吐き気がする」
(それは異臭のせいじゃねーのか…?)
言いたくなるゼルを抑えるのは、エナのただただ強い二色の瞳。
今まで何度か見たことのある類の瞳。
「あたしは、あたしなの」
その声に宿る強さに首を傾げたのはジストで。
その聞き覚えのある言葉に息を飲んだのはゼル。
エナは二人の顔を交互に見て、ふと笑う。
今まで食い違っていた自身の心と自身の生き方。
葛藤は精神まで侵す程に自分を追い詰めた。
何が自分なのか、わからなくなるほどに。
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