雨の闖入者 The Best BondS-2

「やってやろーじゃない。中身、硬くないってわかったんだし」


挑発めいた声色でエナはヌンチャクを強く握り締めた。


「あのギザギザが砕けねェもんじゃねえってこともわかったな」


エナの肩に残る黒い破片をゼルが払う。

ゼルの剣が獣と接触した時に飛び散ったものだ。

剣の刃はこぼれていない。

さすがは妖刀エディといったところか。

その事実は彼らに些細だが確かな勝機を見い出させた。


「ジスト、殺さずの契約、今回だけは例外よ」


獣だけを瞳に映して後ろにいるジストに獣を殺す覚悟を伝え、ヌンチャクを再度構えた。

だが、エナの腕を大きな手が掴み、ぐん、と引かれる。

思わずよろめいたエナは首を捻り「何すんのよ!」と声を荒げた。


「?!」


振り返った先で裸の上半身を見つけたエナの頭を、ジストは先ほど迄着ていたニットのノースリーブでがしがしと拭いた。

エナの頭の上に服を乗せたままジストは一歩進み出て、半身だけを振り返らせて銃を二、三度振ってみせた。


「さ、エナちゃんは下がってて。ヌンチャクじゃ無理でしょ」


「だな。お前は高見の見物ってヤツだ」


そしてゼルとジストは目を合わせる。


「調教はあんたの得意分野だったよな」


「勿論。まーかせてっ」


昂揚する気分を隠そうともせずに、二人は口元に笑みを刷いた。




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