「エナっ! 避けろ!」
けれど、ようやく嘔吐感を飲み込んだエナにはその言葉に反応出来るだけの余裕などなかった。
そこへ、もう一発、弾丸が打ち込まれる。
獣の動きが一瞬止まり、新たな液体がエナの頭上を濡らす。
「戻れ!」
ゼルの声に今度こそエナは反応し、動いた。
ジストが居る方向へと走る。
エナへの意識を避けさせる為にゼルは踏み込み、もう一度剣を振り下ろした。
貫けないと知っているゼルも金属音が鳴った瞬間にも剣を引き、後方へと戻り、声を掛ける。
「大丈夫か、エナ!」
両目を失った獣は怒号のような咆哮をあげ続けている。
「大丈夫なモンかっ! すっごクサいっ! 頭から被っちゃったジャン、ジストのバカっ!」
妙な連語作る余裕がありゃ平気だな、とゼルがぼやく。
「そんなこと言ったってー……替えの弾無いから確実に仕留めないとだしー……ってかごめんエナちゃん、あんまり近寄らないで?」
にっこりと笑いながらも自らの鼻を抓(ツマ)むジストの発言にエナの細い堪忍袋の緒は容易く切れた。
「誰のせいだぁっ!!」
拳をジストの顎に叩き込もうとしたエナの動きが、ゼルの言葉によって止められる。
「ケンカは後にしてくんねェか? あのヤロー、まだやる気みてェだぞ」
歯をむき出しにして威嚇する獣は両目から血を流していても、まるで見えているかのように彼らに向き直っていた。
目の前の獣にとって視力など対した役目を持っていないのはわかっていた。
耳が聞こえるだけで、この獣は確実に彼らの居場所を捉えるのだから。
けれど、ようやく嘔吐感を飲み込んだエナにはその言葉に反応出来るだけの余裕などなかった。
そこへ、もう一発、弾丸が打ち込まれる。
獣の動きが一瞬止まり、新たな液体がエナの頭上を濡らす。
「戻れ!」
ゼルの声に今度こそエナは反応し、動いた。
ジストが居る方向へと走る。
エナへの意識を避けさせる為にゼルは踏み込み、もう一度剣を振り下ろした。
貫けないと知っているゼルも金属音が鳴った瞬間にも剣を引き、後方へと戻り、声を掛ける。
「大丈夫か、エナ!」
両目を失った獣は怒号のような咆哮をあげ続けている。
「大丈夫なモンかっ! すっごクサいっ! 頭から被っちゃったジャン、ジストのバカっ!」
妙な連語作る余裕がありゃ平気だな、とゼルがぼやく。
「そんなこと言ったってー……替えの弾無いから確実に仕留めないとだしー……ってかごめんエナちゃん、あんまり近寄らないで?」
にっこりと笑いながらも自らの鼻を抓(ツマ)むジストの発言にエナの細い堪忍袋の緒は容易く切れた。
「誰のせいだぁっ!!」
拳をジストの顎に叩き込もうとしたエナの動きが、ゼルの言葉によって止められる。
「ケンカは後にしてくんねェか? あのヤロー、まだやる気みてェだぞ」
歯をむき出しにして威嚇する獣は両目から血を流していても、まるで見えているかのように彼らに向き直っていた。
目の前の獣にとって視力など対した役目を持っていないのはわかっていた。
耳が聞こえるだけで、この獣は確実に彼らの居場所を捉えるのだから。

