「な、んだ? 急に静かに……」

ゼルが廊下を見渡した。


息を潜めると、かすかに地響きが聞こえる。


庭を歩き回っているようだ。


「音……か」

ジストが苦々しげに呟いた。


「耳だけはいいらしいな。ゼル、大声出せ。バカはそういうの得意だろう? 二階に飛び乗られたら厄介だ。ここで迎え撃つ。エナちゃんは上に行って武器を……」


ジストがいつになく神妙な顔で振り返った先に……エナは居なかった。


「あった!!」

階上からエナの声が聞こえ、ジストは肩を落とした。

「せーっかくジストさんが珍しく二枚目演じてんのにー……」

「っつーか、お前が上でデカい声出してどーすんだよっ!」


ゼルの声に呼応するように、玄関に大きな音がぶつかった。


みしりと玄関の閂が撓(シナ)る。


意に沿わずとも、ゼルは自らの役目をきっちりと果たしたわけだが、バカと言われたのを自ら肯定したと思われるのも癪なので「わざとだからなッ」とジストに吠えた。


「ゼル! ジスト!」


階段の上からエナの声と共にそれぞれの武器が投げられた。


躊躇うことなく受け取った二人は、廊下の最奥で玄関口に向かってそれらを構える。



エナが階段を降りてくる。







その時、






扉は破られた。









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