「……ってコトはまだ、夢の中ってわけね……」
全てを理解し頷いたエナの背後からジストの舌打ちが聞こえた。
「夢ン中……? 現にこうやって三人で喋ってんじゃねーかよ」
今、目の前に立っているゼルの傷が、彼らの知る傷よりも深かったことでも、
ゼルに巻いたはずの包帯が無いことでも、
ここが現実ではないのだと嫌でも気付かされた。
いまいち理解していないのはゼルただ一人だ。
エナは自らが壊した扉の残骸を乗り越え、外の様子を窺った。
「夜……かな」
叩きつけるような雨が全てを遮り、時間帯も読めぬほどに風景は闇に染まっていた。
すぐそこにあるはずの湖の存在も肉眼で捉えることは出来ない。
「こりゃ見事に見えないねー。ってかこの臭いは……」
入り口の上部に手を掛けながらジストが口を開いた、その時。
「!」
耳を劈(ツンザ)くような音が暗闇の中に轟(トドロ)いた。
一体何種類の音が凝ったらこんな音になるのかと思うほどの濁った音。
割れた窓だけでなく床さえもびりびりと揺らせる振動からも、その音の大きさは知れる。
「……なンだ?! 今の……」
音が消えた今でも耳の奥でわんわんと音が波を作っている。
耳に残るその音をエナは知っていた。
海の前で一糸纏わぬ姿になって五感を研ぎ澄ませた時に。
女の呻き声のような風の中に紛れ込んだ不協和音。
『不自然』と感じた音の集まり。
そう、それから『異臭』も感じた。
あの時は余りに微かで不鮮明にされていたが。
この臭いとこの音は、まぎれもなく。
全てを理解し頷いたエナの背後からジストの舌打ちが聞こえた。
「夢ン中……? 現にこうやって三人で喋ってんじゃねーかよ」
今、目の前に立っているゼルの傷が、彼らの知る傷よりも深かったことでも、
ゼルに巻いたはずの包帯が無いことでも、
ここが現実ではないのだと嫌でも気付かされた。
いまいち理解していないのはゼルただ一人だ。
エナは自らが壊した扉の残骸を乗り越え、外の様子を窺った。
「夜……かな」
叩きつけるような雨が全てを遮り、時間帯も読めぬほどに風景は闇に染まっていた。
すぐそこにあるはずの湖の存在も肉眼で捉えることは出来ない。
「こりゃ見事に見えないねー。ってかこの臭いは……」
入り口の上部に手を掛けながらジストが口を開いた、その時。
「!」
耳を劈(ツンザ)くような音が暗闇の中に轟(トドロ)いた。
一体何種類の音が凝ったらこんな音になるのかと思うほどの濁った音。
割れた窓だけでなく床さえもびりびりと揺らせる振動からも、その音の大きさは知れる。
「……なンだ?! 今の……」
音が消えた今でも耳の奥でわんわんと音が波を作っている。
耳に残るその音をエナは知っていた。
海の前で一糸纏わぬ姿になって五感を研ぎ澄ませた時に。
女の呻き声のような風の中に紛れ込んだ不協和音。
『不自然』と感じた音の集まり。
そう、それから『異臭』も感じた。
あの時は余りに微かで不鮮明にされていたが。
この臭いとこの音は、まぎれもなく。

