「ロウ……見つけたぞ、他の道」
「へえ? 何?」
届く、筈だ。
求められているのだから。
届く筈だ。
届くことを強く求めた。
届くことをひたすらに信じた。
叩きつけるように、叫ぶ。
見つけてくれと願いを込めて。
「オレは此処だ! ……エナ!! ジスト!!」
呼ぶべき名前を呼ぶべき時に自然と口にしたゼルに、ロウウェルが柔らかに、にっこりと笑う。
「そう、それでいいんだよ、ゼル兄」
穏やかな声が安堵を滲ませて耳に届く。
――これで、僕も心残りはなくなった――
もはや声とすら呼べぬ音。
その音に、息子のようでもあったロウウェルの真意が込められていた。
剣士としての志を確かに持っていたロウウェルの本当の想いを。
ゼルは確かに感じ取った。
灰色に包まれた空間が瓦解していく。
代わりに、渦巻く強風がその空間を支配する。
皮膜を剥ぐように、空間がぺろりと捲れ…――。
永遠にも似た一瞬の後、靄(モヤ)が晴れたその場に居たのは。
自分を確かに呼んだ者達だった。
自分が確かに呼んだ者達だった。
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