雨の闖入者 The Best BondS-2


「ロウ……見つけたぞ、他の道」

「へえ? 何?」


届く、筈だ。

求められているのだから。

届く筈だ。

届くことを強く求めた。

届くことをひたすらに信じた。

叩きつけるように、叫ぶ。

見つけてくれと願いを込めて。


「オレは此処だ! ……エナ!! ジスト!!」


呼ぶべき名前を呼ぶべき時に自然と口にしたゼルに、ロウウェルが柔らかに、にっこりと笑う。


「そう、それでいいんだよ、ゼル兄」


穏やかな声が安堵を滲ませて耳に届く。


――これで、僕も心残りはなくなった――


もはや声とすら呼べぬ音。

その音に、息子のようでもあったロウウェルの真意が込められていた。

剣士としての志を確かに持っていたロウウェルの本当の想いを。

ゼルは確かに感じ取った。


灰色に包まれた空間が瓦解していく。

代わりに、渦巻く強風がその空間を支配する。

皮膜を剥ぐように、空間がぺろりと捲れ…――。

永遠にも似た一瞬の後、靄(モヤ)が晴れたその場に居たのは。




自分を確かに呼んだ者達だった。



自分が確かに呼んだ者達だった。





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