「うん、知ってる」
ゼルの性格を熟知した弟は短く答え、剣を一閃させる。
避けるにも余りにも近距離すぎて、ゼルの体にまた新たな傷が増える。
「……くっ……」
最初の一撃ほど深くない。
それでも血は滴り、足元の水溜りを大きく広げる。
このままでは命が消えるのも時間の問題だ。
自分に残された時間は決して多くない。
「他の道はねェのか……! ……ロウ……! やめろよ! やめてくれ!」
血を吐くような想いで問うてみる。
優しいロウウェルだから、考えを変えてくれるかもしれないという甘えもあった。
だが、その望みはあっさりと断ち切られる。
「それは、ゼル兄が決めることだよ」
悲しさが広がる。
虚しさが染みる。
「……そうかよっ!」
小さく怒鳴り、傷を負った身でも力強く一歩踏み出す。
剣を取り上げようと、ロウウェルの腕を取ろうとした瞬間。
「?!」
体重を移動させる際に、血の水溜りに足を取られた。
前のめりになって、両手をつく。
その拍子に顔に血が飛ぶ。
両手にも自らの血がべっとりと絡みついた。
鉄くさい臭いが鼻を突く。
「ゼル兄って、案外ドジなんだよね」
くすくすと笑う声と共に、首筋にひんやりとした切っ先があたる。
(……これで終わりかっ?!)
自分への叱咤か、発破か。
だが、諦めきれない「生」に縋る。
「これで、終わりなのかよっ?!」
声に出して自分を鼓舞する。
その時、心の琴線に何かが触れた。
「っ?」
琴線に触れた何かを探り出そうと心が逸る。
何かを忘れている。
大切な何かを忘れている。
「これが始まり、だよ」
ロウウェルの声も、命の危機も霞むほど、気になる「何か」。
ゼルの性格を熟知した弟は短く答え、剣を一閃させる。
避けるにも余りにも近距離すぎて、ゼルの体にまた新たな傷が増える。
「……くっ……」
最初の一撃ほど深くない。
それでも血は滴り、足元の水溜りを大きく広げる。
このままでは命が消えるのも時間の問題だ。
自分に残された時間は決して多くない。
「他の道はねェのか……! ……ロウ……! やめろよ! やめてくれ!」
血を吐くような想いで問うてみる。
優しいロウウェルだから、考えを変えてくれるかもしれないという甘えもあった。
だが、その望みはあっさりと断ち切られる。
「それは、ゼル兄が決めることだよ」
悲しさが広がる。
虚しさが染みる。
「……そうかよっ!」
小さく怒鳴り、傷を負った身でも力強く一歩踏み出す。
剣を取り上げようと、ロウウェルの腕を取ろうとした瞬間。
「?!」
体重を移動させる際に、血の水溜りに足を取られた。
前のめりになって、両手をつく。
その拍子に顔に血が飛ぶ。
両手にも自らの血がべっとりと絡みついた。
鉄くさい臭いが鼻を突く。
「ゼル兄って、案外ドジなんだよね」
くすくすと笑う声と共に、首筋にひんやりとした切っ先があたる。
(……これで終わりかっ?!)
自分への叱咤か、発破か。
だが、諦めきれない「生」に縋る。
「これで、終わりなのかよっ?!」
声に出して自分を鼓舞する。
その時、心の琴線に何かが触れた。
「っ?」
琴線に触れた何かを探り出そうと心が逸る。
何かを忘れている。
大切な何かを忘れている。
「これが始まり、だよ」
ロウウェルの声も、命の危機も霞むほど、気になる「何か」。

