どっしりとした重厚な作りの屋敷。
温かみのある木の床と壁は深い焦げ茶色で、
金で遇われた枠組みの先に四つ程チューリップのような形がついた控え目なシャンデリアを引き立てている。
物にこだわりながらも謙虚さを忘れない人柄が伺えたからこそ、
壁に一定感覚で取り付けられた電飾の一つが切れているのがいやに目立った。
よく見ればシャンデリアにも蜘蛛がせっせと巣をつくっているし、
跳ね上がった土が玄関口でパリパリに固まり、こびりついている。
本来、落ち着いた温かい印象を持たせる筈の家が、今は荒んだ印象しか与えていない。
エナは二人の会話をよそにぐるりと屋敷を見渡した後、
嬉々としてゼルをからかうジストと、すっかり定着してしまった弄られキャラを払拭しようとするゼル――しかし、払拭するには相手が悪すぎることに気付いてはいないようだが――に一言発した。
「うるさいわっ!ペット共!」
抗議の声が一つから二つになったのは、まあ当然の話だろう。
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