雨の闖入者 The Best BondS-2

「ねえ今度こそ、こっちで本当の家族になろうよ」


その言葉に悲しみが募る。

ようやく家族達の死を受け入れることが出来たというのに、既に死した者から願いを告げられることの哀しみ。

その内容への切なる痛み。

ロウウェルが剣を向ける事実。

ゼルは剣を構えることも出来ないまま、ぼうっとロウウェルを見つめていた。


「覚悟はいい?」


刃を向けられて、気付く。

自分は今確かに命の危機にさらされている。

誰かが仕組んだことなのだとしたら例え夢でもただでは済まないことはわかっていた。

だがそれでも、何の闘志も湧いてこない。

今までだって望まぬ戦いは存在した。

望まぬとも、命を危険に晒された時ゼルは相手を斬ってきた。

夢を叶えるまでは命を手放すわけにはいかず、負けるものかと勇み立った。

だが、相手が愛した家族であれば。

その刃が自分を貫くとわかってはいても、対抗しようという意思さえ出てこない。

他人では許せないことでも、家族が刃を向けるのなら、受け入れねばならないと思えてしまう。

理由の有無など関係なく、受け入れようと思ってしまう。

愛がなければ決して思えないことだ。

同時に、愛があれば決して逃れられない事態だ。

心臓が大きく波打つ。

背筋が凍りつき、冷や汗でも油汗でもない、不可思議な汗が伝う。


「………構わねェ。やれよ」


覚悟を決めた、半ば睨みつけるような目でゼルは言い放った。

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