美咲は同窓会の案内を手に取りながら、少し胸の奥がざわついた。
学生の頃、誰にも言えない恋をしていたことを、ふと思い出したのだ。

あの頃の先生。
真面目で、でもどこか優しくて、授業のたびに心が揺れていた。
放課後にふと目が合うだけで、世界が少し輝くような気がして、
その感情が「恋」だと知った時、胸がぎゅっと締め付けられた。

もちろん、叶うことのない想い。
大人で、頼れる存在で、手の届かない人。
でも、美咲にとってあの時間は、甘く切ない記憶として、ずっと胸の奥に残っていた。

そして同窓会の日。
久しぶりに会った先生は、奥さんと子供と一緒に現れた。
少しだけ、あの頃の淡い期待を思い出しそうになる自分を感じたが、
すぐに現実に戻る。

「先生、変わらないですね」
美咲は笑顔で挨拶する。
先生も笑って答える。
お互いに、あの頃とは違う人生を歩んでいることを、静かに認め合う時間だった。

胸の奥にまだあった甘酸っぱい想いは、
そのまま大切に胸の中にしまい込む。
もう手に入れることはできないけれど、
あの感情があったからこそ、今の自分がある。