「しばらく連絡もできないと思う。
恋人らしいこと、できないから……別れよう」
颯太はそう言って、まっすぐ沙織を見た。

「ごめんね」じゃなくて、
「ありがとう」って言いたかった。

思い出が溢れて、何も言えなくなり、
沙織はただ頷くことしかできなかった。

空港のロビーで、最後に見た颯太の背中は、
不思議なくらいまっすぐで、
あの日の少年のままだった。

——本当に好きだった。
でも、同じくらい、颯太の夢も好きだった。

帰り道、風が少し冷たくて、
頬をなぞる涙を隠すにはちょうどよかった。

いつかまた笑って話せる日が来る。
お互いが、自分の場所で頑張っていることを、
どこかで感じられる日がきっと来る。

颯太が目指す空の向こうには、
新しい未来が広がっている。
そして沙織も、ここで自分の人生を生きていく。