空港までの道のり、

街の景色がやけにゆっくり流れて見えた。
助手席の颯太は、いつもと同じ穏やかな表情で、
でも、その瞳の奥には決意があった。

「行ってもいいの?」
沙織が聞いたのは、数週間前。

颯太の夢は、ずっと昔から知っていた。
小さい頃から海外に行って、自分の力で何かを作り上げたいと言っていた彼。
その夢が現実になったとき、
嬉しい気持ちと同じくらい、胸の奥が締めつけられるように痛かった。

「行かないで」なんて言えなかった。
颯太が夢を叶えることは、ずっと願っていたことだから。
だけど、ついて行くこともできなかった。
沙織には沙織の生活も、仕事もある。
彼の背中を押したいのに、心はついていけなかった。