「嘘でしょう。嘘……」

 私は人知れず、言葉をこぼす。

 だって、転生したっていうことは、一度死んだってことよね。
 えー。なんで死んだんだろう。
 過労死《かろうし》とか? まぁ、食生活もずぼらだったし。

 でもそれがまさか、夢にまで見た転生だなんて。

 キョロキョロと辺りを見回し、人がいないことを確認すると、私は足早に木陰に隠れる。
 ああ、ここならきっと誰の目にもつかないわ。

 そしてもう一度だけ人目を確認すると、ウキウキとした気分を押さえられずに叫んでいた。

「ステータス、オープン!」

 一度言ってみたかったのよ、これ。
 だって前の世界でやったら、タダの痛い人だし。
 いや、今だって誰かに見つかったら十分痛い人ではあるんだけど。

 でも、どーーーーーしてもやってみたかったの。

 すると私の期待に応えるように、小さな羽音《はおと》にも似た機械音がした後、宙にステータスが表示された。

「キタキタキタキタキター」

 これがあるってことは、普通の異世界転生じゃなくって乙女ゲームとかそっち系ってことよね。
 あー。こんなことならラノベとかだけじゃなくて、そっちも齧《かじ》っておくべきだったなぁ。

 ゲーム機は高いし、スマホは容量《ようりょう》小さいのしか買ってなかったからアプリ入れれなかったのよね。
 いやぁ、残念過ぎる。攻略法とか進め方とか全然わかんないじゃない。

「いや、まぁ、そもそも恋愛って……」

 私が生まれて死ぬまで、何年あったっけ。
 まぁ、若くはなかったと思う。記憶がかなり曖昧《あいまい》だけど。
 でも、一度だって彼氏いなかったもんなぁ。
 いわゆる喪女《もじょ》ってやつ。

 でも今更死んでしまったんだから、嘆《なげ》いても仕方ないし。
 憧れの世界に来れたんだから、今度こそ人生を楽しまなきゃね。

「で、ステータスはどうなっているのかな」

 私は一つずつ確認していくことにした。