どうも。私が悪役令嬢に嫌がらせ指導をして、ドン引きされたヒロインです。

「大丈夫です。私、毒耐性ありますし!」
「いやいやいやいや、そういう問題じゃない」
「え、状態異常無効ですよ?」
「……その歳で、どんな生活をしてきたらそんなスキルが身につくんだ」

 あれれ。
 なんか思ってた反応と違う。
 引いている以上になんか、哀れられてるみたいな?
 
 えええ。
 なんか思ってた展開と違うぞ。

「嫌がらせレベル越して、殺意あるレベルを強要してどうする」
「えええ、ダメでした?」

 だって全体的に物足りなかったんだもん。憧れのヒロイン役なんだよ?
 やっぱり堪能したいじゃない。

 それには完璧な悪役令嬢が欲しかったんだけど。なんかみんなの目を見てると、明らかに私の方がレベルおかしいみたいな……。

「えええ、本当にダメでした?」
「みんながドン引きしてるのが見えないのか?」

 いや、真面目な顔で教授に言われなくなって分かる。分かるよ。ドン引きされてることくらい。
 でも現実を見たくないんだもん。

 これって、これってさぁ。

「もしかしなくても、攻略失敗……」
「何を言っているのか意味は分からないが、嫌がらせのレベルを上げろという人を見たのは初めてだよ」
「わたくしは、なにを相手にしていたのかしら」

 やだやだやだやだ。
 その目、やだよぅ。
 確かにトレス殿下には興味なかったけど、それとこれとは話が別だ。

 攻略相手すら分からない状態で、一人目からドン引きされるって、どーなの。
 いや、どーする私。
 この世界でやっていけるのかな……。

「とにかくだ。職員室まで来るように」

 呼び出されたのはフィリアではなく、私であったのは言うまでもない。
 ただひたすら倫理と言う名のお説教は、何時間も続いた。

「私の王子様はどこ!!」
「おまえをマトモに扱える奴なんて、いないだろうな……」
「いーやーだー。恋愛したいよぅ」
「諦めるか、その性格を直してからだな」

 泣きそうになる私の肩に教授は手を置き、深いため息をついた。
 
「なんか思ってたんとちがーーーーーーぅ」

 そんな私の叫び声など誰も気づかってくれることもなく、前途多難な王子様探しは始まるのだった。

 いや、知らんけど。たぶんね。きっとそのはずだ。と、せめて、私だけはそう思うことにした。