私が聞く前に、彼は先に口を開いた。
「真理子と結婚するのさ。お前も知ってるだろ? 芦原真理子」
「‥‥‥‥」
もちろん知っている。この芦原ブライダルの社長の娘だ。
「彼女の存在は俺を更なる高みに連れていってくれる。お前とは比べ物にならない」
「‥‥‥‥」
もはや何を言う気にもなれなかった。
つまり彼‥‥森岡拓馬は、この会社と繋がりを持つ為に、社長の娘と結婚する事にしたのだ。
「分かっただろ。全く‥‥」
森岡の笑い顔は、歪んで見える。
私はこんな人の為に、今まで頑張ってきたのかと思うと、絶望と後悔しか感じない。
森岡は、最初からそのつもりで私を利用してきたのだ。
「一つ言っておくとな‥‥」
馬脚を現した森岡は、饒舌だった。
「紗和。お前のプランは良かった。良すぎた。おかげで俺が出したプランが危うくボツになる所だった。社長に認められる絶好のチャンスだからな。だから真理子に頼んでお前のプランは落としてもらったのさ。だからお前の案がダメだったわけじゃないから安心しろよな」
「‥‥‥‥」
それから森岡は一人で話し続けていたけど、私には何も聞こえていなかった。
私は淡々と仕事をこなしていた。
これからどうするべきか‥‥混乱している頭を整理する為の時間が必要だった。
退社しよう‥‥そう決断したのは何か月か経って後‥‥そんな時、私に一つの大きな仕事が任された。
それは森岡拓馬と芦原真理子の結婚式だった。
しかも私の提出したプランを使って。
森岡は私と顔を合わせる事はなくなってたけど、かわりに真理子が要望を伝えてきた。
「‥‥こんな地味なの? やっぱりプランナーって言ったって、こんなとこの地元じゃ、たかが知れてる。東京のデザイナー頼もうかしら」
彼女とは今まで会社には顔を出した事はほとんど無く、面識はなかった。
派手な服とブランド物でみをかためた彼女は、私が今まで出会った厄介な顧客の誰よりもクレームをつけてきた。
「あなたが拓馬にふられたのって、気の利かない所だったんじゃない?‥‥惨めよね。負け犬って」
「‥‥‥‥」
私は他にどうしようもなく微笑んだ。
「真理子と結婚するのさ。お前も知ってるだろ? 芦原真理子」
「‥‥‥‥」
もちろん知っている。この芦原ブライダルの社長の娘だ。
「彼女の存在は俺を更なる高みに連れていってくれる。お前とは比べ物にならない」
「‥‥‥‥」
もはや何を言う気にもなれなかった。
つまり彼‥‥森岡拓馬は、この会社と繋がりを持つ為に、社長の娘と結婚する事にしたのだ。
「分かっただろ。全く‥‥」
森岡の笑い顔は、歪んで見える。
私はこんな人の為に、今まで頑張ってきたのかと思うと、絶望と後悔しか感じない。
森岡は、最初からそのつもりで私を利用してきたのだ。
「一つ言っておくとな‥‥」
馬脚を現した森岡は、饒舌だった。
「紗和。お前のプランは良かった。良すぎた。おかげで俺が出したプランが危うくボツになる所だった。社長に認められる絶好のチャンスだからな。だから真理子に頼んでお前のプランは落としてもらったのさ。だからお前の案がダメだったわけじゃないから安心しろよな」
「‥‥‥‥」
それから森岡は一人で話し続けていたけど、私には何も聞こえていなかった。
私は淡々と仕事をこなしていた。
これからどうするべきか‥‥混乱している頭を整理する為の時間が必要だった。
退社しよう‥‥そう決断したのは何か月か経って後‥‥そんな時、私に一つの大きな仕事が任された。
それは森岡拓馬と芦原真理子の結婚式だった。
しかも私の提出したプランを使って。
森岡は私と顔を合わせる事はなくなってたけど、かわりに真理子が要望を伝えてきた。
「‥‥こんな地味なの? やっぱりプランナーって言ったって、こんなとこの地元じゃ、たかが知れてる。東京のデザイナー頼もうかしら」
彼女とは今まで会社には顔を出した事はほとんど無く、面識はなかった。
派手な服とブランド物でみをかためた彼女は、私が今まで出会った厄介な顧客の誰よりもクレームをつけてきた。
「あなたが拓馬にふられたのって、気の利かない所だったんじゃない?‥‥惨めよね。負け犬って」
「‥‥‥‥」
私は他にどうしようもなく微笑んだ。



