彼のプランは贅沢なものだった。
 会場は廃業寸前の古い洋館チャペルを再利用。リノベーションして一つの大きな舞台のように作り上げた。
 予算はだいぶかかったけど、コンセプトは素晴らしく、集積者は皆、満足していたようだった。
 その成果があって彼はブライダルマネージャーに昇進した。
 「おめでとう!」
 私は心からの祝福を送った。
 「え?‥‥ああ、うん」
 「?」
 何となく彼の言葉の端切れが悪い。
 「‥‥どうかしたの?」
 「うん‥‥」
 「?」
 「紗和‥‥別れてほしいんだ」
 「‥‥‥‥」
 一瞬、彼が何を言ってるか分からなかった。そして理解した瞬間、目の前が真っ白になって言葉が出なくなる。
 聞き間違い? 最初はそう思った。
 「‥‥どういう‥‥事なの?」
 「どうもこうも‥‥」
 私がしつこく訳を尋ねると、それまで困ったような顔をしていた彼の顔が一変した。
 「ああ!‥‥だからお前とは別れるって言ってるんだよ。何回も言わせるなよ!」
 「どうして‥‥」
 「どうしても何も‥‥」
 口を開くのも面倒臭いという感じで、ため息をついた。
 「今度、俺はな、結婚する事になったんだ。だからお前とは別れなきゃならない。当然だろ?」
 「‥‥け‥‥」
 結婚?‥‥そんな素振り‥‥全く見せてなかったのに。
 一体誰と‥‥。