私は地元では結構有名な結婚式場に勤めてる。いわゆる、アシスタントプランナーという名前で、ウエディングプランナーのサポート役。
 プランナーという名前だけを聞くと華やかそうだけど、実際は裏方で重労働。仕事が好きじゃないととても続けられる仕事じゃない。
 専門学校を卒業して念願の式場に就職出来たけど、そんな私も、あまりの勤務内容のきつさで何度かくじけそうになった事もある。そんな中、私を支えてくれたのは、私の教育係でメインプランナーの先輩、森岡拓馬。
 同期が次々と辞めて行く中、森岡さんはいつも私を励まし、支えてくれた。
「大丈夫、君には才能がある。だから自信をもって」
「はい!」
 森岡さんに惹かれていったのは自然な流れだった。
 ある日の事、注文の激しい‥‥ほとんどクレーマーに近いお客さんの要望をたて続けに処理しなければならない時があった。気が付けば終電を逃す時間になっていた。
 タクシーで帰ろうか、それとも式場の仮眠室に泊まるか‥‥悩んでいた私に森岡さんは、
「僕のマンションはここの近くなんだ。白石さん‥‥良かったら‥‥来ないかな」
「‥‥‥‥」
 その言葉は、ただ終電を逃した後輩への言葉だけではなくて‥‥一夜を共にしないか‥‥という意味あいが含まれている事はすぐに分かった。
「‥‥‥‥」
 私は頷いて、その日から先輩は私の『彼』になった。
 学生時代の浮ついた夢みたいな恋愛とは違う‥‥お互いに結婚を意識した大人の付き合い。それでも、こうして二人が同じ結婚式場で働いていた事は、運命に違いないと、職場でのアイコンタクトをしている最中‥‥私は不思議な安らぎを感じながら、そう思っていた。
 
付き合って一年。私はそれなりの仕事を任されるようになって、昇進の話も出て来た。
それにはもちろん彼が応援してくれたからこそで、私はそんな彼の為に、もっと頑張って、彼に釣り合うようになりたいと‥‥そればかり考えていた。